ことば探し
なりたい職業は?と聞かれたら、「探検家!」と答えていた少年は、大人になった今も懲りずに航海、冒険みたいな言葉が好きで。でも、今の世界を探検家として生きようとするには、いろんな波が押し寄せて来るようです。自分の外側からも、内側からも。
そんなことも知らないのか?と思われたくないからとベストセラー本のビジネス書を立ち読みしている時、気が乗るわけもなく、すぐに本を閉じます。
昇進した友人から誇らしそうに自分の名刺を差し出された時には、「おめでとう。」と声をかけた居酒屋の帰り道には、素直には喜べていない自分に気づき、次の瞬間にさらに大きな劣等感が返って来る、というように・・・。たとえとあるレースで、勝利を収めても次のレース会場に移されるだけ。分かっているのに辞められない。
では、この世界をどう旅すればいいのか。そのヒントが、ことば探しにあったようです。
世界は、全て私たちが生み出してきた言葉で組み上がっている壮大なフィクションだ。
そう理解できたら、「今の自分はどんな眼鏡を掛けているんだろう?」と問いかけて、新しい眼鏡を探しに本を開いては、昨日までは7色に見えていた虹が100色に見えるようになるような瞬間を誰かと共有する。
絶えず変化していく世の中のことを、少しでも見通そうと本を読んだり、誰かに話を聞きに行ったり。自分の感覚を殺すことなく、素直に向き合う。言葉を探し続ける。そして、いつか、ぴったりの言葉と出会う。考えがまとまったら、まわりと分かち合って、また次の分からないことが現れる。そうやって霧の中をちょっとずつ進んでいく。
新大陸の発見ほどのエクスタシーかは感じたこともないので分からないけれど、ことばが見つかった時、誰かと分かち合えた時には、ちょっとした心地よい感覚が湧き上がります。
何かを知ることって、誰かと争うためなんかじゃなくて、みんなで新しい眼鏡を探すためにあったのだと。
そんな風に思う、今日の私を、幼少期が見てもなんとも思わないのだと思うのですが、
これが立派な探検家なんだと誇れる私でいたい、と思います。