事業とは何だろう_新卒研修18日間を終えて

事業とは何だろう_新卒研修18日間を終えて

4月からこの会社の一員になりました、かいやです。
今回は新卒研修18日間を私なりに振り返ってみようと思います。

社会に出るってどういうことだろう?と思いながら初めて出社した4月1日。
新卒社員に与えられたのは「事業とは何か」という問いでした。
大きな問いに、漠然とした不安を感じたことをよく覚えています。

 

 

◆問いと答え

「事業とは何か」と問われて、皆さんならどう答えますか?
大学で勉強したり本を読んだりして、すぐに○○と答えられる方もいるのかもしれません。私はさっぱり分かりませんでした。問いの答えはもちろん、なぜこの会社は新卒研修で「事業とは?」なんて問いを投げかけてくるのかということも。
けれど、問いの設定と同時に社員の方がこんなことをおっしゃいました。
「正解はないんだけどね」

学校教育、とくに小中高は教科書に正解が載っている問題を与えられ、解く。そのために教科書を覚える。記号を吸収する機械みたいにすることが勉強することだと教わるし、そう信じて疑わない。私も例に埋もれず、そのひとりでした。
そんな形式に慣れた脳は、正解のない問いとの向き合い方を知りません。だから、「正解はない」と言われても正解を求めるような頭の使い方しかできません。

 

 

◆図解をすることで、問いと向き合う

問いとの向き合い方のヒントとして与えられたのが、図解して見えないものを見えるようにすることでした。自分が何を分かっていないのかを分かるためには、全体を構造として図解してみるのです。
なるほど!と思ったはいいものの、次は図解の方法が分からない……。とにかく見様見真似で自分の頭の中にある事業を図にしてみます。
すると、出てきたのは理念が中心にあり、その実現のための新規事業を既存事業が支えているというピラミッドのような考え方でした。
ただ、何か心もとない。就活中つまり学生だった時の自分でも書けるような図しか出てこない。見ようとしているものしか構造として図解できないのだから、つまり何も見ようとしていないのではないか。
あれ?社会に出たはずなのに、自分は何をしているんだろう……。
学生や生徒という立場は自分が思うよりもずっと深く自分に根付いていることを痛感しました。

 

 

◆理論と実践の行き来

社内にはそこかしこに本棚があり、みっちりと本が並んでいるし、社員の方々の机にもそれぞれに本が積まれています。経済の本もあれば、社会学の本も仏教の本も歌集も雑誌も、ジャンルは多岐にわたります。
なぜ会社でそんなに本を読むのだろう?と入った当初は不思議でたまりませんでした。

「事業とは何か」を考えるにあたって、とりあえず本を読んでみるというのは、誰もが思い浮かぶ手段なのかもしれません。私も何冊か手に取りました。それで分かった!と思ってしまうのは簡単です。読んで分かった気になるというのは、会社に入れば社会に出た気になるのと同義なのかもしれないと思い始めました。
では、どうやって本や知識を使うのか。会社の中でよく聞く言葉として「学習のサイクル」というのがあります。一言でいうと、理論と実践を行き来することです。実践の中で自ら問いを立て、本を道具として考えを深めていく。ヒントや思考のきっかけを得て、また実践をし、次の問いを立てる……。それを繰り返していくことで仕事の成果があげられる人間になると同時に、このサイクルを自分で回せることが楽しくなる。そうすると、仕事が楽しくなる。
言葉で説明すると、まるで夢のようにいいことだと思えてきます。

新卒研修でも理論(本を読んだり議論をしたりして「事業とは何か」を考える)だけでなく、実際にプレコチリコが現在、取り組んでいる読み物を書いてみました。ここでいう書くとは、学校の作文や感想文を書く行為とはまったく別物です。市場をリサーチし、プレコチリコのお客さんが抱えている課題を考え、自分が誰に対してどの立場から記事を書くのかを類推を通して決め、構成を立て執筆する。ここに一貫性のある論理がなければ、お客さんに満足してもらう記事を書くことはできません。

ただ、この文章を書いている今も説明がおぼつかない私がいます。そこで、本を読んでみます。例えば市場の仕組みが書いてある本であったりドラッカーの経済学の本であったり。すると、マーケティングが意味しているところが少しずつ見えてきます。今まで消費者として関わっていた市場のメカニズムや生産者の作為が見えてきます。
では、自分も生産者として作為を持って書く行為を行わなければならないと考えます。そして、やってみる。すると、次は作為を持つためにはお客さんの課題をより具体的に捉える必要に迫られる。それで人の課題意識はどこから来るのか知りたくなる……。
ざっくりですが、こんな具合でした。

ただ、これを繰り返しているうちに私の中に大きな問いが立ち上がりました。
他の新卒社員もそれぞれに、大きな問いを抱え始めたように見えました。各々、違う問いです。でも、どこか繋がっている気がする、そんな問いです。

 

 

◆社会人という自覚

自覚というのは恐ろしくて、自覚できたと安心した傍から思い込みに代わっていってしまう気がします。だから、ずっと自分に問い続けなきゃいけない。その問いが自分の体の一部になってしまうまで、ずっと。「私は社会人として生きられているのか」「社会人とは何か」。

この感覚が「事業とは何か」の問いを解くことと重なりました。ずっと問い続けること、ずっと向き合い続けること、その時々で自分なりの答えや意志を持っておいて、それを刷新し続けること。それでしか、「事業とは何か」という大きな問いに向き合うことはできないのだと今は思っています。この考えすらも、いつかは変わるのかもしれませんが。

会社が「事業とは何か」という問いを新卒社員に与えたのには、いくつかの訳があると思います。
学習サイクルの習慣づくり、自分がやるのだ!という覚悟を生む、仕事を楽しむ働き方を知る、成果を出す社員になる……。では、それらはすべてどこに繋がっているのか。
この答えが、学生でもできるような事業の図解になってしまった際に心もとなく感じた理由を明確にしてくれました。
会社がどう生きているのか分からないのです。人は夢だけ語っていると餓死します。何かしら他人も価値を感じる物かもしくは価値尺度を表す貨幣を持たなければいけない。
きっと会社も同じなのだと思います。

私はこの会社が好きです。価値観が合う気がするし、刺激があって、とにかく楽しい。
だから、一緒に生きていきたい。そのために、生き延びなければいけない。生き延びるために必要なものを得るには知るべきことがあります。端的に言えばお金です。
学習のサイクルが動き出しました。仕事を楽しめる環境に今、自分がいることを純粋にうれしく思っています。