風通しの良い職場と「頑張る」の違和感について

「頑張る」って何だろう

先日、月に1度の内定者面談を行いました。今回は来春から仲間に加わる新卒内定者2名に加えて、新卒3年目の先輩社員も含めたメンバーでのオンライン座談会スタイル。内定者から、最近気になっていることや考えていることを自由に話してもらったのですが、その中で『「頑張る」って何だろう』という興味深い話がでました。

「頑張ってね」「頑張ります」わたしも日常でよく使ってしまっているけれど、改めてそれってどういうことだろう…その意味を考えていくと、この問いは働く上でも、風通しの良い職場づくりにも関係してくるように感じたので少し深めてみることにしました。

「誰かのため」が言い訳になり、呪いになる時

参加していた社員の1人は「以前は相手に喜んでもらおうと頑張っていたけれど、どんな反応がくるかという結果が欲しいわけではなくて、その人を思う過程が自分は好きなんだと考えるようになってから楽になった。」と話してくれました。確かに、仕事でもプライベートでも、誰かのために頑張ることはすごく力が湧いてくるし、喜んでもらえるとうれしい。だけど、うまく伝わらなかったり、思った通りの反応がこなかったりするとその頑張りが報われなかったような、がっかりした気持ちになってしまうこともあります。目の前の人に喜んでほしいと思うのは自然な感情だけど、それが純粋な善意ではなく、見返りを求めた損得勘定なのかもしれないと気づいたとき、「頑張る」ということに対して感じていた違和感が浮かび上がってきました。

人のために頑張るのは素晴らしいことのように思いますが、一方で「あなたのためを思って頑張っているのに」そんな風に自分の動機を他人に押し付けてしまうこともあるのではないでしょうか。そうやって「誰かのため」をモチベーションから言い訳に変えたとき、その「頑張る」という行動は相手や周囲に対して呪いのようにつきまとっていく気がします。

「あの人はあんなに頑張ってくれている」「私のためにこんなに頑張ってくれているんだから応えないと・・・」「みんな頑張っているんだから自分も頑張らないと・・・」
自分の中での頑張る理由、本当の動機を見つける前に、無理やり押し付けられる「頑張れ」の空気に飲まれて知らず知らずのうちに心を蝕んでいることもあるように思います。

頑張れないことが辛かった時

私自身、目の前に応えてあげたい人がいる場合は一生懸命頑張れていたけれど、反応が見えづらくなった途端に頑張れなくなってしまったことがありました。前職での話になりますが、現場の仕事から離れた時、急に自分の頑張る理由が分からなくなってしまったのです。目の前の人に喜んでもらいたいという単純明快な気持ちだけでは超えられない、本当の動機を持たないと頑張れない状況になった。けれどそれが分からなかったのです。それまでの仕事に対するモチベーションは目の前にいる「誰かのため」を言い訳にしてかろうじて保っていただけだったのだと思います。わかりやすい偶像のような、動機を与えてくれる対象が見えなくなった時、一気に気持ちがぐらぐらと不安定になってしまったのです。まさに、社会が見えていない、狭い世間しか見えていなかった状態でした。

なぜ自分は頑張れないんだろう。ほかの人は頑張っているのに。自分はダメだ…
頑張る理由は見えないけど、頑張れという空気だけはひしひしと感じる。モヤモヤは晴れず、誰にもその気持ちを言えないことが辛かった。なぜ自分は頑張れないのか。頑張らないといけない、それはわかっているのに。自分の内側にしかないモチベーションの種を探そうとせず、周りに与えてもらおうとしていたのかもしれません。

自分にとっての正しい頑張り方を知るために 風通しの良い職場にしておく

これをすれば頑張っているという基準はないし、100%の善意だけで頑張ることはすごく難しい。誰しも損得勘定はあるはずだし、仕事ならなおさらそうです。その違和感や矛盾も含めて自分の中で頑張る理由、動機を知ることが仕事を続けていく上で大切に思います。組織の中で押し付け合う「頑張らないといけない」という空気ではない、1人1人の内から出るものが共鳴し、励まし合うような感情であるように。「頑張る」という感情は自分に勇気をくれるものだから。多くの人が求める”風通しの良い職場”というのも本来はそういう意味のように思えてきました。意見が通るとか頑張っている人が認められるとかというよりも、素直な感情を受け止め合える、そこから自分にとっての正しい頑張り方を見つけられる環境。頑張り方が分からなくなったときは、そのモヤモヤした気持ちを言葉にして伝えられるような。この社会の中で持続していくように。私自身もだし、組織全体もそうあるといいなと思います。

少しずつですが、内省や精読会などの取り組みを通してそのような澄んだ空気が流れるようになってきたように感じています。「頑張る」に苦しめられない、そんな風通しの良い職場をこれからもつくっていきたいです。