企画職のコツ③_毎日、新しい自分であろうとすること
企画職のコツ備忘録
今回は企画職のコツ、日々、気を付けること備忘録である。私自身、日々、気を付けていること、仕事をするうえで大切だと考えている小さな小さな意識である。経営者も企画職の一種と考えれば、共通する点は多いと思う。だから、恐れず書いてみたい。7つの意識にまとめてみた。どれも「究極は思考停止を戒めること」の多様な側面なのであるが、より具体的に使いやすいように書いてみたい。そして、最後は人間存在の本質に触れることになるだろう。
一、わからないこと、経験のないことに出くわしても決して逃げないこと
仕事は日々、わからないこと、新しいことの連続である。企画職ともなればそれは当然の事。学生時代、教科書を暗記していれば合格点が取れた時代が懐かしい、そう思う人もいるかもしれない。しかし、これはズーっと続くことである。事実、会社を作って20年が経過した今も、日々、新しい知識にチャレンジする毎日である。すでに、今ではそれが宿命であり、それのみが自分の価値であることを自覚しているが、会社を作った初めの3年くらいは正直、「こんなストレスがズーっと続くのか」と戦慄したのを記憶する。こりゃあ、ストレスを友達にしないと叶わんなぁ、そんなことを考えたのを覚えている。
しかし、それも3年もすると慣れてしまった。それ以降は、ストレスがないといられない体になってしまった。ストレスがないとつまらない、退屈でしょうがないのである。人間とはつくづく慣れる生き物だなぁ、と思う。脳みそと精神の体力が付いてしまうということか。見たことがないのでわからないが、脳みそのシワも増えているのかもしれない。筋トレで胸筋に張りが生まれるように・・・脳みそや心も強くしなやかになるのであろう。
二、質問を構成すること、質問を発すること
新しいことに出くわしたら質問を構成するように努力すること。これは他者に聞くということよりもむしろ、自分自身の理解が進むように「問い」と「答え」のかたちに出来るだけまとめていくのである。これは果たして何問題なのか。これはそもそも問題なのか。問題だとしたら回答はどんな感じになるのだろうか。はじめ明確なことばに出来なかったとしても、その意味するところは浮かんでくるはず(おそらく)。それを懸命にことばにしてあげる。心の中で自分自身に問いをぶつけて、心の中でそれにこたえていくことである。誰に何を聞かれてもいつでも答えられるように、常に自分自身で世界をことばにしておくことである。何事も準備8割。備えあれば憂いなしである。
三、コピペは絶対しないこと
たとえば上司にメモを渡す時。お客様のお声に返信を書くときなど。決して前に使った文章をコピペしないことである。一回、一回、状況やお客様の文章を読み込んで、流れる文脈、その意図するところ、書いているときの気持ちを考えること。そして、状況に寄り添うように文章を書くことである。目の前に上司やお客様がいるかのように。決して言い訳せずに真摯に向き合うことを考える。それは、慣れない人には面倒な作業であるかもしれない。いちいち最初から考え直していたら日が暮れてしまう、と思えるかもしれない。しかし、そうではないのである。一回一回、集中して書くことで、結果的にパターンが見えてくる。体はいつしか同じことはしないようになっていくのである。人間は集中力を持続すると、シニフィアンのコピペではなく、シニフィエをコピペするように生まれついているようである。それを信じることである。
絶対にコピペなどしない。コピペは人間として恥ずかしい行為である。そう思うまで続けなければならない。
四、マニュアルを作ろうとしないこと
業務の効率を上げるにはマニュアルを作ればいいのではないか、と考える向きもあるようだが、これは大きな間違いである。情報化社会、知識社会である21世紀に、基本、マニュアルなど役に立たない。逆にいうと、マニュアルで済むような仕事はみなシステムに置き換わってしまうということである。それはすでに人間がやるべき仕事ではないのである。「もしかしたらこれはマニュアルになるのかもしれない」そう感じる仕事があったらそれはシステム化がまだ進んでいないのか、または、あなたが仕事の本質を見誤っているのである。思考停止で肝腎の仕事の肝の、その周辺ばかりを舐めまわしているのではないかと一度立ち止まって考えて見るべきであろう。私は毎日、何をしに会社に来ているのか。何が仕事の本質、成果なのか、ちゃんと考えなければならないだろう。
五、自分の仕事をルーティン化しようとしないこと
次は自分の仕事をルーティン化しようとしないこと、これである。「これをやって、あれをやって、最後にそれをやれば仕事は終わりっ!」こんな考え方が企画職の対極にあることを知らなければならない。やることリストに書けるような作業は基本、企画職の真ん中の仕事ではない。他者との小さな約束を守るためのやることリストを投げやりにしてよい、ということでは決してないが、それはマイナスをゼロにする仕事と心得よう。企画職の本領は、ゼロからイチを作ることである。決してルーティンには収まらないことを肝に銘じよう。
企画職の仕事の事始めは「状況の認識・意味付け」である。状況が常に変化する以上、表面的に同じ作業にみえたとしても、その意味するところは変わっているのである。もし、それを同じと捉えるとしたら、あなたの思考は停止している。考えてはいないのである。気を付けたい。
六、メモを取らないこと、その場で理解すること
わたしは基本、メモを取らない。それは社長という立場で回りがフォローしてくれるから、ということも多少はあるが本質はそんなところにあるのではない。それはメモを詳細に取ると人間はその場では考えないようになることを知っているからである。メモを取ってさえいれば、後で考えられるという甘えが少なからず生まれてしまう。夜寝る前に見返してゆっくりひとりで考えよう、という都合の良い言い訳を正当化してしまう。そんな人間の弱さを封じ込める意味もあるのである。弱い自分を知っているというべきか。だから私は可能な限りメモを取らない。
そして、それにもまして重要なのは、メモを取ることくらいでは競争に打ち勝つ知識は手に入らないことを知っているからである。事業にとって大事なことは市場でみずから学んだことである。人から聞いた知識など、すでに世界の多くの人々が知っていること。そんなことメモしたところで会社の競争に役立たなければ意味がないことを知っているのである。ここは学校ではないのである。テストでいい点数をとっても意味のない世界である。市場で顧客に評価されてはじめて生き残る資格を手にできる、そういった世界である。本当の意味のある知識はメモなど出来ない。それが企画職の真理である。
七、常に、淀みない文章を作り出すこと
状況は毎日変化する。決して同じ一日は訪れない。昨日と同じ知識でやり過ごせる今日など決して来ないことを知ろう。だからこそ、毎日、毎日、何度でも、何度でも、淀みない文章で仮説を作り上げなければならないのである。一度作った仮説にも、時間が経過すればその周辺に体系的に知識が積み重なっていくもの。だから、常に見直して、書き直す覚悟が必要である。仮説は固定したシニフィアンのカタマリではない。世界と共に躍動する動的なメカニズムの表現であることを知ろう。そして、仮説は常に企画者とともにある。企画者の存在形式を中心に、世界を動かす動的なエネルギーなのである。インクのシミのカタマリには決してしないこと。意味を失い、仮説に面白みを感じなくなったらそれは、あなた自身が思考停止に陥っている証拠なのである。
企画職の感情は、あなた自身の世界の見かたが形づくることを肝に銘じよう。つまらない世界は、あなた自身の内面の投影でしかない。あなたが学習し続けていれば、世界はそれにちゃんと答えてくれるものである。人間とはそうした存在である。企画職を考えるとき、そんなことも考えざるを得ない。企画職とは、人間のあるべき存在形式そのものである。
20世紀最大の哲学者と言われたハイデガーもいっている。
人間存在の本質とは「投企(とうき)」である、と。
新しいことに挑戦すること、それが自分自身を創造することである、と。
毎日、新しい自分であろうとすること。
そうした意識を持つことこそ企画職の本質であり、人間であることの本質なのであろう。