企画職のコツ_エンジンを強くすること・常に全体を見失わないこと・放っておいても時間の経過とともに改善していくメカニズムにはめること

企画職のコツ_エンジンを強くすること・常に全体を見失わないこと・放っておいても時間の経過とともに改善していくメカニズムにはめること

時間がかかるのは自分自身の判断の遅さに原因がある

ここでは企画職とマネジャーを同列で扱う。断りがなければ企画職=マネジャーである。

判断こそ企画職の核心である。判断に次ぐ判断の連続。それが作業員(オペレーター)と企画職の一番の違いである。その判断に逡巡してしまうこと。どのように考えればいいのか、わからないこと。それが企画職の仕事で時間がかかってしまう最大の原因である。決して作業量の問題ではない。部下や周りの能力の問題でもない。企画職はいうなれば司令塔。司令塔が明確に認識し、明確な指示を出せてこそ、仕事は効果的に前に進むのである。そして、周りにいる人々は滞りなく仕事に集中できる。(ひとりの作業でも同じこと)

判断力を上げるにはどうすればいいか。それが問題である。私も会社を始めたころはそればかりを考えていた。日々、刻一刻と、部下たちに質問される。取引先にも会えば質問の嵐である。そのひとつひとつの質問に、明確に、意味を持って答えるにはどうすればいいか。

こういう時はシンプルに、シンプルに、考えよう。要はどうすればいいのか?要は時間の経過とともに数字が改善すればいい、そんなふうに考えてしまうのである。価値はいったん脇に置いて、メカニズムの動きだけを考える。

経営理念や社会貢献などは今はあえて考えない。近代社会においては、会社の外側を形成する社会そのものがメカニズムなのである、そのことにのみ集中する。価値合理を捨て、目的合理のみを考えることにする。目的合理のメカニズムは止まることなく回り続けている。近代が始まって以来、その動きは止まることなく回り続けているのである。その流れをつかまえればいい!!あえて、そう考えてしまう。現場での判断のほとんどは、あなたの信念が問われる場面にはないのである。限られた時間にスピード感をもって意思決定することに集中するべきである。それも技術である。

※これのみに溺れると性格が悪くなるから気をつけたほうがいいとは思うが・・・、それに逡巡して思考を振り切れないのは弱さでしかない。

 

19世紀、産業革命の真っただ中、世界の経済は一方行に成長し続けた。1920年、アメリカで世界恐慌が起きるまで世界の経済は成長し続けていたのである。しかし、恐慌が世界を襲った時、経済学者はなぜ今まで経済が成長していたかのメカニズムを読み誤った。ゆえに、恐慌から脱出するのに数十年の時を消費してしまった。世界大戦の遠因になったことは歴史が語る。経済学者も社会全体で見れば、企画職の一種である。学者が自説にこだわったおかげで多くの人々が苦しんだ例である。

 

近代社会はメカニズムなのである。会社の仕事もそのメカニズムを無視しては語れない。商品企画もカスタマーサービスも部下育成も、近代のメカニズム抜きには語れない。そして、その視点が企画職の判断力を左右する。企画職は、その社会のメカニズムをこそ捉えるように努力するべきである。そのメカニズムに沿って仕事を建てつけること。そうして初めて自然体での成果が可能になる。

 

①エンジンを強くすること

まずは、エンジンを強くすることを考える。すなわち、数字が上がるメカニズムにダイレクトに影響を与えるテコの支点を見つけるのである。商品の企画なら顧客価値の中心点を見極めること。価値を作り、または、増強し、顧客にその価値を伝える努力が仕事の焦点である。また、売り場づくりを考えるとき、それは顧客の印象をこそ設計するのである。どういう手順で顧客に価値を伝達すればスムーズに伝わるのか。都度、都度、の顧客の心理をこそ設計する。決して自分たちがやることを設計するのではない。これは、顧客対応にも即、応用できる。顧客からの問い合わせ一件に返答を返すという業務一つをとってみてもそれは変わらない。要は、顧客がその返答を聞いて(または読んで)どう思うのか?その時の顧客の心理をこそ考える。そこに意識を集中させる。カスタマーサービスの場合、会社側の人間が真摯に顧客の生活形式を考えることが肝になる。うまい日本語や誤字脱字などは実は顧客の印象にはあまりマイナスではない。それよりも何よりも、真摯に顧客の立場に立ち切ること。そうした社員をこそ増やすことが肝要である。マネジャーは中心点を間違えずに現場に指示を出す。

そのほか、経営企画などのスタッフ業務、営業や人事などの業務でも同様である。効率より効果、一撃必殺をイメージして仕事を設計することがキモである。

 

②常に全体を見失わないこと

エンジンを強くする術が見つかったら、今度は、こんがらがらないように常に全体の絵を描くようにする。いつも、いつも、自分がどんな全体像の中に位置付けられているのかに気を配る。直接的な連環だけでなく、間接的なつながりをも出来る限りイメージする癖をつけることである。財務諸表との連環がイメージできれば最強である。ポイントは、人とお金とシステム(メカニズム)。それらを暇さえあればつなぎ合わせるように、シンプルに連関できように考える。

これは毎日の始まりや終わりに意識するといいだろう。通勤の時、帰宅の電車の中、週末などの時間を活用するようにする。会社全体や事業部の損益数字を連環を考えながら眺めることも効果的である。売上の力学、利益率の力学、販管費の種類や優先順位などを現場の連環と共にイメージする。

 

よく、「現場社員がそこまでするのか?」「経営がそこまで現場に要求するのか?」と叱られるが、作業員ではなく企画職を目指すのなら必須の作業であることを理解したいものである。加えて、これからのAIの時代、人間に残された仕事はコンピュータが苦手な全体性にこそ宿ることを注意したい。

 

③放っておいても時間の経過とともに改善していくメカニズムにはめること

エンジンと全体性にめどが立ったなら最後はそこに時間軸を入れてあげることである。描くイメージは静止画ではなく動画。顧客の認識の変化や競合の動向、新しいシステムの完成・改善などによっても状況は動くことを忘れない。そればかりか、社会のニュースが自分の仕事に直接的に影響を与えることも増えた。今回のコロナ禍などその最たるもの。世界の出来事が、目の前の自分の小さな仕事にダイレクトに影響する時代である。

こまかな知識は必要としない。専門知識も不要である。そうではなく着眼点は、素人でも理解できる基本的なメカニズムである。その大きな潮流を捉えること。その流れの強さや方向に気を付けることである。自社の事業に影響を与える流れはどれか?その関係性の過多から眺めるのである。コツは自分の具体的な仕事から離れないこと。

そして、その流れを背に受けて自分の仕事を設計しているのか。もし、数年間、仕事に手を付けられなかったとしても、数字が落ちないように考えられているか。最悪、数字が落ちたとしても、再び成長軌道に乗せられるかどうか、それをあらかじめ考えておく。それが「放っておいても時間の経過とともに改善していくメカニズムにはめること」である。

 

他者へのメッセージはシンプルな一言にまとめておく

次は、上の3つを基本に他者と共に働く場面を考える。部下や上司や取引先。マネジャーをイメージしてもいいと思う。しかし、基本、企画職の仕事も他者と共にあるものである。自分一人で完結する仕事は基本、この社会には存在しないと思うべきだろう。

繰り返すが基本は上の3つである。自分が何をすべきか、何をしたら効果が最大になるのかを先に考えることは基本である。それがなければなにも始まらない。加えて他者へのメッセージをシンプルに設計することを考案するのである。

メッセージの建付けは、相手の仕事の性質に依存するだろう。一概には言いにくい。しかし、相手の仕事の性質を思い描き、その困難な部分を十分理解し、それに沿う形でメッセージを伝えることを意識する。そうすれば、こちらの意図は、それをしなかった場合に比べてもはるかに伝わりやすくなる。連携する他者も仕事がやりやすくなるわけだから、繰り返し、あなたと一緒に仕事をすることを望むだろう。あなたは一人でやる時よりも、大きな仕事を同じ時間内でこなせるようになる。その分、仕事のスピードも何倍速である。より狭い領域に意識を集中させられるのでミスも減り、仕事の質も上がること間違いない。

 

他者との協働のコツはシンプル・メッセージ。これに尽きる。

 

なくしてしまえる業務はないか?に、常に気を配る

ここまでが企画職の判断力を上げるための骨格部分であろう。これをいかに継続するか。最後にそれが問題になる。

コツは仕事をいつもシンプルに保ち続けることである。それに一番効果を発揮する問いが「なくしてしまえる仕事はないか?」である。人間は、慣れが来ると惰性で仕事をこなすようになる。役所の仕事が典型で、これをパーキンソンという社会学者は、近代の病として定式化したほど。ゆえに、その病は、自分にも確実に訪れることを考えておかなければならない。自分だけ無縁ということは決してない。

一番、簡単なコツは資料を捨ててしまうことである。そして、会議や打ち合わせの時に出来る限りメモを取らないようにすることである。そのために、仕事の現場に大きな段ボール箱を設置する。捨てていいか迷った資料を一時的に保管しておく箱である。ゴミ箱ではない。保管箱である。そして、1か月か2か月、そこに入れておく。そうして1か月後、その資料を一度も見なかったとしたら思い切って捨ててしまうのである。その時のコツは、後悔してもいいと思うことである。間違って捨ててしまう損失より、とっておいて効率を落とすリスクの方がはるかに高いことを知るべきである。

それから会社全体の共通の資料は出来る限り自分の手元には置かないことである。議論の際にその場で必要だからと配られた資料などは、一社に1枚あればいいものであることが多い。部門で1枚、チームで1枚ということもあるかもしれない。そうした資料は出来るだけ、手元には置かないことである。仕事にはタイミングというものがある。その時、必要に感じる資料もだいたいは数か月後には必要なくなっている。会社数字の資料などは、必要な時、経理や経営企画室に見せてもらえば十分である。

 

最後に。一週間のリズムを作る

あとはこれらの作業を一定のペースで再生産することを考える。一番オーソドックスなのがキリスト教歴に従うこと。つまり週7日間をベースに集中力の緩急を組み立てておくのである。長い時間、だらだらしつこく作業を継続するのはダメである。残業などもってのほか。毎日、毎日、短時間で効果的な仕事に全力集中して、疲れはその日のうちに取り去っておくこと。翌日に疲れを残さないことも仕事の内と考える。

体調を整えるのも企画職の重要な仕事であると知ろう。企画職の仕事の中心が判断であるのなら、体調はかなりの割合で影響を及ぼすことを知るべきである。人間、体調が悪い時には前向きな判断は下さないものである。それは、自分でも気がつかないうちにそうしていることが多い。また、あまりにも機嫌がいい時も判断は控えるべきだろう。無駄にリスクを背負い込むことになる。やはり、一番望ましいのは平常心である。出来るだけ一定のリズムを崩さずに、淡々と集中することを考えるべきだろう。

 

そうはいっても機嫌がよくないこともある。落ち込むこともある。そうした時は、どうしたら自分の気持ちが復活するのか、自分なりに工夫して考えておくことも意外と重要である。

 

わたしの場合、今は、ネットフリクスの『ブラックリスト』を見ることである。これがなかなか効果抜群。あとは音楽を聴いたり筋トレをしたり。こうして文章を書くことも、密かにストレス発散になっている。ご参考まで。