【ニュースコラム】 NHK夜9時のニュースを見て考えたこと
NHKニュースを見た
ラグビー・ワールドカップ以来、テレビを見ていなかった。でも、たまには世の中をチェックしないとまずいかもしれない。そう思ってNHKの夜9時のニュースを最後まで我慢して見ることにした。でも、やっぱりイライラして苦しい。1分ごとに突っ込みどころが出てくる。このアナウンサーは本当にこんなことまじめにしゃべっているのか?それともこれは全て茶番劇か?俺が世界に騙されているというのか?今のデータは根拠が全く示されていないじゃないか。分母と分子がわからない。世論が偏るじゃないか。このニュース、さっきのニュースと整合性が取れていない、意図しているのか?それとも馬鹿なのか???なんなんだ、このニュース番組・・・これが日本の国営放送のメインの報道番組かぁ・・・
NHKニュースにないもの
中期経営計画の合宿の時にもさんざん確認したけれど、モノゴトを議論する時、また、コミュニケーションを取ろうとするとき、まず、重要なのは、「状況の意味付け」という作業である。そもそもいま、私たちは何をしようとしているのか。大きな目的手段図式の中に「今」を収めてあげること。東西南北・前後左右、どこからきてどこに向かうのか、そんな言い方もできる。その「今」というものの「状況が意味づけられ」ないと、ことばは宙に浮いてしまい、コミュニケーションは不全となる。状況が意味付けられないと、「場」における意味のやり取りは不可能になり、単なる雑音を生産するのみ。暇つぶし以外の何物でもなくなってしまう。
NHKのニュースはこれである。たんなる暇つぶし。公共電波を無為に消費している。アナウンサーは無意味な原稿をただカラオケのように読むのみ。チェックしているのは声が綺麗かどうか、聞きやすいかどうか、だろう。意味の構成など誰も考えていない。NHKニュースには「状況の意味付け」が全くない。マスコミの本来の目的である権力のチェックという使命も全く感じられない。ワクチン注射の状況が最近のニュースの焦点であるのはわかるが、その大目的、現在の進捗状況、その原因・理由、この先の見通し・・・それら全体像が全く示されないまま、ただただ、現場の苦労などが垂れ流される。どこかの一般の老人を捕まえてきて、「いつものお医者さんに助言いただきながら、ついでにワクチンを打っていただけるなんて安心しました。とっても不安だったので」。こんな老人の意見を聞いて何になる?だからなんなんだ?今、重要なのは一刻も早く全国民にワクチンを打ち切ることじゃないのか?それのみが重要。その状況のみが重要。老人の意見など聞く必要ないではないか。
1時間見たが何もわからなかった
それでも頑張って終わりまで見た。でも、何もわからなかった。ワクチンの状況がどうなっているのか、結局、なにもわからなかった。政治家の発言もいくつか出てきたが、みな「最大限の努力をしなければならない」とかいうだけ。アナウンサーはアナウンサーで、「本当に心配です」とか言っている。ほんとうにバカなんだと思った。
どうしてこうなってしまうのか。どうしてこれほど日本社会はダメなんだろう。だってNHKだろ?これは日本国の国営放送だろ?そのメインの時間帯のニュースだよな?全国民がこれを頼りにしてるはずだよな????
日本人であるということの呪縛
日本人は意見を言ってはいけない。作為を持ってはいけない。科学的分析など反逆行為である。できるだけおとなしく、変わったことをしないように。サラリーマンとして、公務員として、我慢して仕事をし続けることが一番の安心・安全。時間通りに通勤して、一杯やって帰宅する。つまらない家庭でも、人生なんてそんなものです。自分を納得させることが大人というものです。早く定年になってゆっくり温泉で骨休みしたい・・・
起業?そんなことテロ行為と同じです。家族からそんな人間が出たとしたら、もう世間様に顔向けできない・・・わたしも同じような反応をされたのを思い出した。
みな座席争いこそ人生と心得ている。それ以外は想像したこともない。「え?それが人生じゃないんですか?」昔、面接で学生に言われて絶句した。やりたいことを我慢して、なんとかカタチに収まろうとすること。仕事とは我慢すること。我慢した奴がいい思いができるんです。これ常識ですよ。お母さんにもそう言われて育ってきたんだ。今さら何を・・・。親孝行は大事でしょ?親をだいじにすることと自分の意思を持つこと、作為を抱くことは両立する。でもそれは言ってはいけないこと。違う文脈を持ってきて自分をごまかし続ける。
だから日本人はいつもなんだか不満である。元気に仕事をしている人間が許せない。それは家族に対しても同じである。いや、家族だからこそ、近しい存在だからこそ、元気で溌溂と仕事をされては困るのである。何かと文句をつけて潰さなければ。今はコロナなんだから。身体が心配なだけ。善き社会をつくろうとする組織は全部、テロリストか新興宗教団体でないと困る。近しい人間が幸せになったら困るのである。それが日本人である。
そんな日本人の性質をうまくつかむと、NHKになるのである。NHKが悪いのか、見ている日本人が悪いのか。
善き社会の実現のために働きたい。私は本当にそう思う。しかし、それはこうした日常の一こまを見ないふりしては実現できないと思う。こうした些細な現象に立ち向かう必要がある。近しい人々や、よく見るテレビの中にこそ真理は隠れているのである。
人生一度きり。素直には受け入れられない自分がそこにいる。
それでもわが祖国。どんなに腐っても見捨てられない・・・
NHKのニュースを見てそんなことを考えていた。