【ニュースコラム】日本のコロナ禍対策を考える

【ニュースコラム】日本のコロナ禍対策を考える

現場は悪くない?

難しいことは承知している。世界中が混乱の中にあったのである。特に昨年の春頃は、情報も少なく判断に迷ったであろうことは想像に難くない。医療従事者の方々も現場で懸命に努力されていることであろう。本当に頭が下がる。それらを否定するつもりはない。しかし、である。やはり日本のコロナ対策・対応は、やはり酷い。世界で断トツの無能ぶりを露呈してしまった。心底恥ずかしい、そう思った。私たちは、こんなリーダーしか、持つことが出来ないのである。

 

飲食店の時短は合理的な判断ではない

何といっても飲食店に対する対応である。緊急事態宣言の発令で、飲食店は夜8時以降の営業を自粛させられた。当初、法的根拠は何もなかった。ただ、世間の風評を圧力に営業を自粛させていったのである。

根拠は唯一、マスクを外すのが食事の時だから。その時、一番、感染している確率が高い、というものだった。であるならば、対策はアクリル板の徹底ということになぜならないのか?なぜ、時短になるのか?昼間は感染しないとでも思っているのであろうか?明らかに、夜の繁華街に対する狙い撃ちである。夜のお店なら世間は政府を非難しないから。馬鹿な大衆に、もっとも非難されにくい策を選んだに過ぎない。まったく科学的ではない。

 

「権力」の使い方

そもそも昨年の2月か3月の時点で、緊急事態宣言を出すタイミングがあった。3週間、徹底的に外出規制をする。そして、PCR検査を全国民に実施すべきだった。ゴキブリ退治のバルサンのようなものだから、1週間したらまた、全国民に実施する。1週間したらもう一回徹底的に実施する。それで、完全に台湾のように終息させられたはずである。日本は機を逸したのである。当時の首相は安倍さんである。周囲にいたのは菅さん、麻生さんである。今だに権力の座に居座っている。この方々を支える選挙区の方々は何も責任を感じないのだろうか。

 

日本の人口当たり病床数は断トツの世界一である。しかも、西洋諸国に比べると今年の1月くらいの段階では100分の一程度の感染率であった。単純計算して、アメリカやヨーロッパ諸国に比べると病床は余ってしかるべきであった。それがひっ迫している、と報道されていた。

要は医療制度の問題であったのだ。常日頃、対策をしようという気概がなかったがために、緊急時にそのつけを払わされた。また、リーダーが腹をくくらないために、既得権を持つ日本医師会に舐められる。開業医などは当然、自分の病院経営が最優先だから抵抗する。しかし、そこをねじ伏せるために「権力」というものはあるのである。大きな利益のために、小さな個人的利益を犠牲にさせる。そのために権力はある。それを使う絶好の場面だったのだが。完全に気を逸した。科学的な問題解決アプローチをしていないから、周囲をまったく説得できないのである。データを示して、記者会見で全国民に訴えればいいだけだろう?

 

民主主義は科学的思考をベースに組み立てられるべきモデルである

世間は、「安倍さんは悪くない」という。「菅さんや小池百合子は頑張っている」という。それがそもそも、日本がコロナ対策に失敗した根本原因である。この国は曲がりなりにも主権在民。選挙権、すなわち、政治家に対する生殺与奪の権利を国民の一人一人が持っている。その選挙民が、そういうならば、それがいくら理屈に合わなかろうがそうなってしまうのである。選挙民が勉強しなければ民主主義は成り立たない。それを自覚している国民はいない。

 

すべきだったことは、昨年の2月時点での国民すべてに対するPCR検査だった。それが物理的に間に合わないのであれば、抜き取り検査でもよかったのである。要は、まず、事態を把握するためにデータを取得することだったのである。対策はその結果を見て、論理的に仮説立てていくしかない。常に、最悪の事態を想定して、先手を打つのがリーダーの役割である。そのための権力である。

 

事ここに及んでは、もうワクチン以外に打つ手はない。今更、緊急事態宣言を出したところで国民は聞く耳を持たないだろう。効果も限定的である。ウィルスも蔓延しているので、焼け石に水である。飲食店の苦境を思うとき、胸が痛む。

それでも大阪府や東京都を中心に、緊急事態宣言の要請を政府に申し立てている。ひとえに、地元の医療がひっ迫している、というのが主な理由。政府が法改正も含めて対策をしなかったつけを私たちは今、払わされている。

 

もうすべきことはないだろう。モグラたたきのような対策以外、ワクチンを待つしかやることはない。まあ、戦争しているわけではない。アメリカが東京上空に爆弾を落としているわけではない。自分自身や身内が死ぬかもしれないが、それも確立の問題である。そう考えるしか、なくなってしまった。せいぜい、マスクを怠らないことである。

 

 

科学的問題解決アプローチの術を知らない人々が、要職のリーダーやそれを決める選挙権を持つとこうなる、という実例である。科学的思考が出来ない人は「権力」を持ってはいけないのである。図らずもそれを証明して見せたのが今回の日本のコロナ禍対策であった。まだ、終わっていないが、もう勝負はついてしまったのである。

 

科学的思考と絡め、みなさんはどう思うだろうか。