時間に追われないためには「仕事を捉える」こと
私なりの「時間に追われない」ための方法
私たちが生きる現代社会はとても忙しい。月曜日から金曜日まで、息つく暇もありません。あまりにも便利快適を求めたがゆえにこうなってしまったのでしょうか。余裕はどんどん失われるようです。
会社で働くとは、そんな忙しい毎日に耐えること、そう思っている人も多いのではないでしょうか。若い社員と話しているとそれを感じたりします。
でも、それは勘違いなのではないでしょうか。あえてそう思ってみると、また、違う景色も見えてくるのではないか、私はそう思っています。
今回は、そんな社員たちの声にこたえる形で私なりの考え方を書いてみたいと思います。私なりに気を付けている「時間に追われない」方法です。
それは「仕事を捉えること」
そのための方法は、一言で言うと「仕事を捉える」ということに尽きます。なんだそんなことかと言われてしまいそうですが、原理的に、それしか方法はない、そう思います。
「忙しい」という現象を、自身の内面を振り返りながら考えてみます。すると、本当はそんなに忙しくないということが見えてきます。「忙しい」というのは、本当は、仕事を「捉えられて」いないだけ。意識を集中させるべきポイントがわかっていないだけであることが多いのです。端的に、考えなくていいことをあれこれ考えてしまっているのです。「すべきこと」が見えていない。そうして頭の中にゴミが溜まっていきます。判断力も鈍ります。何も決められないまま、どんどん時間だけが過ぎ去っていくのです。
自身の「判断力」の低さが忙しくさせているのです。そのために「仕事を捉える」。仕事に捉えられるのではなく、こちらから仕事を捕まえに行くのです。
「仕事を捉える」とは何か
「仕事を捉える=仕事を捕まえる」とはどういうことでしょうか。
その時大事になるのが、その仕事の外側の状況です。「空間軸と時間軸」と言ったりしますが、そのあなたの「仕事」が置かれている「文脈とメカニズム」を考えることです。「文脈とメカニズム」は、いくつかのことばで言い換えることができます。「目的と関連性」とか「仕事の意味」とか言った具合です。「あなたはその仕事でどうしたいのか」ということです。組織全体の目的から具体的な課題に迫る方法です。
仕事のメカニズムは人に聞くだけではわからない
なるほどそうなのか。メカニズムとはそういうことか。ならば私の仕事のメカニズムを明日上司に聞いてみよう。そう思ったでしょうか。でも、それではあなたの仕事のメカニズムはわかるようにはなりません。絶対に。
なぜでしょうか。
それは、「あなた自身がそのメカニズムに組み込まれている」からです。あなたのその内面も、あなたのその嗜好も、ものの見方・考え方もすべてメカニズムの一部です。決して切って考えることは出来ないのです。ここが肝になります。
だから、自分自身で仕事の「目的と関連性」を一生懸命考えるしかない。上司に聞いちゃダメとは言いませんが、それも、自分自身の頭で考えるということがないと無意味です。
考えるための必殺の「問い」
自分で考えていくときの武器は「問い」です。「問い」を自分自身に向けるのです。「なぜ?」と「それで?」の二つです。
「なぜ?」という問いが、仕事に備わる見えないメカニズム(関連性)を明らかにしてくれ、「それで?」という問いが仕事の目的をあぶりだしてくれます。「そもそもなぜ、この仕事は私の担当なのだろうか」「そもそもなぜ、いま、この仕事が必要なのだろうか」「この仕事は最終的にはどこに行きつくべきなのだろうか」「要はどうすればいいのだろうか」
仕事を捉えるために「内省」をする
私たちは、この「問い」に向き合うための特別な時間を会社全体で確保しています。就業時間に公的に組み込んでいます。
朝、会社に来たら、まずやることはこの「問い」への向き合いです。昨日の仕事を振り返ります。そして、一週間の終わりにもう一度、まとめて振り返ります。その「振り返りシート」は私も目を通してコメントします。
「振り返り」はスポーツ選手の「練習」にあたる
振り返りがキツイ、という人によく出会います。あたりまえです。スポーツで言えばそれは「練習」にあたるからです。でも、練習を全くしないスポーツ選手はいません。それでは試合で勝つことは絶対にできません。いくら才能豊かな選手であっても練習をしなければ勝てないことは誰にでもわかります。
しかし、私たちの「会社」という世界では、この「練習」を全くしない人が多いのも事実ではないでしょうか。ただただ言われたことだけを粛々とこなすだけの自動機械のような人はいないでしょうか。私たちも練習をしないと試合に勝つことはできません。
では、会社の仕事における「試合」とは何でしょうか。それは「意思を持つこと」です。自分はこの仕事でどうしたいのか?それはなぜなのか?に明確に答える「意思」です。そうして勝てる可能性が初めて出てくるのです。
意思を持つと仕事は各段に早くできるようになる
仕事に対して意思を持つ。それが「仕事を捉える」ということです。問いに向き合いながら「目的と関連性」を自分の頭で考えて、自分なりの意思を持つ。そのうえで上司に相談するのはいいことです。お互いの意思を確認し、すり合わせ、組織全体の意思に高めていくのです。
そうすれば仕事に追われる、つまり、時間に追われるというということはなくなります。自分自身が仕事を追いかけ、適切に判断できるように変わっていきます。
仕事を捉えることは仕事を楽しむための必須スキル
そろそろまとめようと思います。
自身の知識を増やそうと、新聞や本をただただたくさん読む人がいますが、それではほとんど効果はありません。自分自身の能力は上がりません。仕事も決して楽しくなることはないでしょう。
そうではなく、目の前の仕事を捉えるのです。目の前の仕事の「目的や関連性」を自分の頭で考えて、ひとつの淀みない文脈として理解していくこと。そして、自分はどうしたいのか、どうすべきなのか、という意思を持つこと。さらに、それを上司とすり合わせて組織の目的やさらに大きな関連性の中に格納してあげることです。
そうすると次第に仕事は楽しいものに変わっていきます。ワクワクする遊びのような対象に変わっていくでしょう。そうして初めて休日明け、会社に行きたくないという憂鬱からも解放されてくるのです。
それが働く者の宿命です。働くものが置かれた構造的なメカニズムなのです。